『世界最速のインディアン』を観た。

旅の目的とは何か。

 『世界最速のインディアン』は、バートが自分のインディアンでライダーの聖地、アメリカのボンヌヴィル塩平原で世界記録に挑戦する話である。ニュージーランドから貨物船と中古車を乗り継ぎ会場に向かう旅をする。
 自分もツーリングをするので、旅について感じることってのがある。あるいは「フジロックに参加する」というのも同じだと思う。大体ツーリングに行くときは一応の「目的地」を決める。苗場だったり「▲▲温泉」だったり。細かい地所でなくても、「〜〜地方」や「国道○○号線沿い」というのもある。一応何かしらの思いいれがある場所が大抵選ばれる。「憧れの地」というやつ。ただ到着するだけなら大抵の場所は観光名所になってるから新幹線やら飛行機やらでぴゅーっといける。でもそうしない。なぜかというと、自分の「足」で勝手気ままに行きたいから、あるいは単純に金が無いから、とまあ理由は色々ある。
 『路上』では、それが西海岸だったり、メキシコだったりするわけで、アメリカ中を放浪することで自身のアイデンティティーを確立あるいは確認する事が無自覚ではあるが――うっすらと感じているといった様子で――目的といえば目的。言うなれば「旅」が自己目的化している。
 そしてこの映画。昔かたぎの気のいいジイさん、バートは金もないしニュージーランドの田舎者だしで前途多難なわけだが、しかしジイさんは行くと決めているのでとにかく進む。信じて疑うことのない意志をもった行動の強さというか、潔さというか。規定事項ですからという言葉が聞えてきそうな感じである。そして、そんなジイさんに関わる人々。地元のバイカーズ、貨物船の船員達、税関の職員、モーテルのゲイ、中古車屋のオッサン、夫に先立たれたオバサン、インディアン、ベトナムから一時帰国した兵隊の青年、レーサーと運営陣達。確かにニックは世界記録を打ち立てたが、しかし一番の見所は、これらの人々との交流であると思う。

スマイルBEST 世界最速のインディアン [DVD]

スマイルBEST 世界最速のインディアン [DVD]