鳥獣戯画がやってきた - 国宝「鳥獣人物戯画絵巻」の全貌@サントリー美術館

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鳥獣人物戯画 - Wikipedia
鳥獣戯画 画像
 そうそうに仕事を終わらせていってきた。しょっぱなから相方さんが行方不明になるも無事到着。夜の六本木ミッドタウン。実に俗物的です。脇の遊歩道の木には電飾がきらびやかに資源を消費し大気を汚染しながら輝いてましたが、「I hate this!!」と思いました。昔は割りと好きだったが、いつからこんなになってしまったのだろうかね。
 3階のサントリー美術館へ。今回の展覧会を楽しみにしていたので期待が高まる。HPからプリントアウトした割引券(100円引き)を見せてチケット購入。1,200円。そそくさと中へ。まずは4階の展示室へ上がりそして3階へという流れ。薄暗い中に垂れ下がるウサギと蛙の垂れ幕が見える入り口で早速相方さんが不満を垂れる。荷物が重いと。ロッカーは何処かと係員に聞けば3階の受付前。戻る。ロッカーは継ぎ目をなるべく目立たなくした木目調で一見ただの壁っぽい。

鳥獣人物戯画絵巻

・甲巻

 荷物を収納し気を取り直して展示室へ。まずはいきなりの「鳥獣人物戯画絵巻 甲巻」の前半部分。猿と兎の水浴びから。背面飛び込みをする兎が良い。鼻を押さえてると事か。猿が恍惚の表情で背中を流してたり、馬だか鹿だかを洗っていたり。場面が変わり兎と蛙の射的。狐の尻尾が燃えているのはなんだっけか?そして宴の準備。前半はここまで。
 相方さんと前半最後の兎について少し議論。あれは射的と(時、場共に)一続きの場面なのか、それとも別なのか。最後の兎が射的に遅れて慌てて向かっているのか、それとも宴の場所へと喜び勇んでいるのか。相方さんが前者支持、僕が後者。はて。
 しかし後半も観たい。有名な蛙が兎を投げ飛ばし気を吐いているところと、蛙がひっくり返っているところが……。
 特に印象に残ったのは兎の眼。なんとも言えない。きれいにまん丸というわけではなく、全体的に角の無いひし形という感じ。弓を構えている兎は少し目を細めていたり、中にはまつげ的な突起があったりと、実に細かく描かれている。しかしそれが緻密に几帳面にと言うわけじゃなく、相方さん曰く「筆に迷いが無くて、流れるように書いてるけど雑じゃない。線のメリハリも良い」という感じ。

・乙巻

 次に乙巻。の前半。甲が擬人化された動物たちだったのに対しこちらは擬人化されていない動物たち。馬や牛、獅子が大抵は二頭一対でじゃれあったり威嚇しあったり。鶏の立ち姿がりりしく、なんというかぐっと来た。

・丙巻

 一転して人物。坊さんっぽい人たちが遊びに興じている。後半には擬人化した動物たちが出てくるらしいが見れず。

・丁巻

 こちらも人物。ものすごいぐでぐでの絵。だが、笛を持つ手だったり、表情の書き分けだったり、姿勢だったりと、そのへんはきちんとして上手い。なんだかうすた先生が思い浮かぶ。

・模本

 長尾模本、住吉模本、探幽縮図と、鳥獣戯画の写しがあった。どうやら、鳥獣戯画はきったり張ったり継ぎ足したりを繰り返し、作製当時の原型をとどめていないようで、他にも色々と断簡があり、これら模本はその当時の様子を推し量る重要な資料らしい。細かいところは図録や他サイト参照のこと。
 しかし探幽縮図は手控えの資料としてさらりと描いたものとは言え、十分鑑賞に耐えうるでき。さすが狩野派

受け継がれた鳥獣戯画

 鳥獣戯画をアレンジしたものやなんかがあった。割と近代のものが多い。狩野永納《滑稽図巻》(江戸時代 十七世紀)の兎と落ち武者が首引きしてるところやほんのりと円く後光のさす偉人か仏様かが札遊びをしていたり、かえるが踊っていたりとおもしろい。
 河鍋暁斎の絵は怖かった。

鳥獣戯画を生んだ環境

 ここでは鳥獣戯画の筆者と言われている鳥羽僧正の《不動明王像》(鎌倉時代 12〜13世紀)や他密教図像、また甲巻に出てくる競馬の場面をフィギュア化したものが描かれた年中行事絵巻など、筆者の説に有力な絵巻があった。

巧みな描線、ユーモアと諧謔

 猿の描かれた最古の土器とされるものが。巧い。

・放屁合戦絵巻

 そしてお待ちかねの放屁合戦絵巻、の前に勝絵絵巻。民衆が追い立てられてなんだ、と思いきや、中では一物の大きさ比べ。前半では一物が実に強調されている。笑える。後半には放屁合戦が描かれている。ものすごい。放屁合戦絵巻と構成が一緒。
 そして《放屁合戦絵巻》(室町時代 1449年)である。しょっぱなに腹ごしらえとは徹底している。相手の屁を扇子で受け流したり、袋に屁を詰めたおなら爆弾を作ったりと、激ポップ。中盤にいる男の被り物を屁で吹き飛ばす男がやはり一番滑稽。次点はその左で見得をきっているっぽいポーズで放屁するおっさん。勇ましい。その間で屈辱的なポーズを取っていた豚顔の奴が妙にむかつく。最後には屁で矢を飛ばしているのか、それとも屁で扇子を貫いているのか…(笑)

・雀の小藤太絵巻(室町時代 16世紀)

 思っていたよりも鮮明な色彩でびっくり。子供が亡くなった小藤太のもとへ訪れ歌を詠む鳥たち、出家して擬人化した小藤太の旅という感じで話が進む。後半は観られなかったがどうやら最後には頭を剃るらしい。

・鼠草子絵巻

 畜生界から脱したい鼠が人間の嫁さんをもらおうと画策し、最終的に出家して寺へという話。結構長い話で、登場する鼠と人間の数も多い。売店に鼠草子絵巻の解説書があったが、金がなかったので買わなかった。かっときゃよかったかな…。

 日本の漫画が世界的なブームになったということを納得させられる内容の展覧会だった。あの鳥獣人物戯画 甲巻、兎や蛙のデフォルメ感は異常。社会風刺も効いてて内容も面白いという。あのキャラたちをコラージュして色をつけたらどうかな、などと不遜な考えを起こしたが、安直過ぎるか。