ポップ道 1960s - 2000s/特別公開:岡本太郎《明日の神話》@東京都現代美術館

 最近めっきり朝が辛い。仕事に行くにもぎりぎりまで寝ている。そんな状況なのに、いつもよりも早い7時代に起きて行ってきた。
 「ポップ道 1960s - 2000s」と銘打たれた常設展示。2007年10/20〜2008年4/13までの間を3か4期に分けて展示を変えているよう。
 受付を済ませるとまず目に飛び込んだのが天井まで抜いてあるアトリウムに鎮座する両脇に白い筒を備えた椅子。筒は椅子に座ると大体耳の高さに来るようになっていて、耳に当てると奇妙な音がする。長さ1m半、直径10?位の筒の中で反響し増幅されたさまざまな音が一定周期でうなる。なかなか面白い。
 そこで上を見上げると吹き抜けの2階に相当する辺りに吊るされた水色の門。アトリウムの四辺に広がった水色ナイロン製の布の面を対称にして上下に門が吊るされていた。下から見上げると、さながら門を水中から眺めているような感覚になる。まあ水中から見上げたら影(逆さまになった門)の方は見えないわけですが、それもまた不思議な気分にさせてくれる。ポップなオブジェクトとして考えるとオルデンバーグ的な手法なのかなと。

1室|ポップ百出

 さて、まず一つ目の部屋はNYポップ・アートの大御所5人+イギリス勢1人。リキテンスタイン、ウェッセルマン、ウォーホル、ローゼンクイスト、オルデンバーグ、ホックニー。それぞれ1点づつ(ウォーホルはマリリンが10点)展示されていた。

・Tom Wesselmann "Bathtub Colage #2"

 まずはなんといってもウェッセルマン。「バスタブ・コラージュ#2」ようやく実物を拝めた。感動。三次元の便器のふた、石鹸立て、棚と化粧品、カーテン、タオルとハンガーと、二次元コラージュの女性、そして描かれた壁とトイレのタンク。本の図版で観ると二次元と三次元の組み合わせが実に不可思議で奇妙な印象を受けたが、実物を見ると違和感がない。とおもって見ているとなんだか奇妙に見えてきたり。ウェッセルマンのワクワク感を実感。と同時に、全体に、特に金属類に経年によるサビや汚れがあるのに気づく。ウェッセルマンの目を通して見た、今はない古い「アメリカ」の姿とでもいうのだろうか。実にレアリスムである。

・James Rosenquist "For Bandini"

 これは60年代に活躍したF1レーサー、ロレンツォ・バンディーニへ哀悼の意を込めて描いたものらしい。デイトナ24時間耐久レース。二分割された画面の右がカー・ナンバー1のフォード、左が23番のフェラーリ、バンディーニ。疾走感あふれる黄色いボディのフォードとは対照的に画面からナンバーがはみ出すほど大きく描かれたフェラーリ。貫禄と思い入れが感じられる。

Andy Warhol "Maliryn Monroe"

 10点横並びの"マリリン"は壮観。そしてちょっとした違和にも気づく。1点だけ顔の部分の色が大きくずれていた。どうやら、髪、アイシャドウ、瞳、ホクロ、唇の色と、ウォーホルが色を加えたパーツの部分を意図的にずらしている様子。なるほど。

・Claes Oldenburg "Three-way Pulg--Scale B, Soft"

 オルデンバーグも初めて実物を拝見。面白い。じつにポップ。「やわらかい彫刻」である。床から3m位のところに吊るされていてはじめは気づかなかった……。やるなMot

日用品を巨大な彫刻とし、さらにそれに柔らかい素材を用いることで、日常生活を芸術のどちらから見ても異質な存在をうみだしました。

Mot作品解説カード「オルデンバーグ,クレス」

2室|ポップ 共振

 ここでは日本の作家による作品が展示されていた。世界に伝播し、日常に入り込んできた「アメリカ」に対する反応。イギリスにおけるポップ・アートと似ているようでちょっと違う。独自のポップ・アートを創出したのに対し、日本ではまずアメリカのポップ・アートを吸収した上での反応。NYポップに対する回答という感じだろうか。当時の日本から見たアメリカというものがどんなものであったか、個々の作家の目を通して見ることができた。

タイガー立石(立石紘一) "アラモのスフィンクス"

 1966年、カンヴァスに油彩の作品。

毛沢東思想のファナティックとアメリカのオプティミズムの谷間で繁栄していた日本の立場が、60年代の若者の中でこのように見えたのだ。

Mot作品解説カード「立石紘一」

 解説カードには、この作品が本質的にはシュルレアリスムであると記述されている。確かに、中国の戦闘機やトラ、「不自由の女神」とされる恐竜などが描かれているが、どれもかなり政治的な意図が多く含まれているような気がしてならない。この状況が日本の状況であるといわれても、舞台は荒涼とした砂漠に築かれたアラモ砦だし、サボテンはあるし。下半身が砂に埋もれ、身動きが取れるんだかとれないんだかという恐竜とその長い影もどこかシュールを感じさせる。ポップ・アートであるというなら、更に階層を落とした、もっと生活に密着した「物」を登場させ、それに寓意を当てはめるとかって言うことなのだろうか。何はともあれ、この絵は結構好きだ。

・篠原有司男 "思考するマルセル・デュシャン", "花魁"

 作者を知らなかったので、作品の経緯やら予備知識なしに見て"思考するマルセル・デュシャン"は面白かった。頭は回転するようだし、手にはコカ・コーラデュシャンの肖像、すっとぼけた顔、そして2mになる大きさ。実にポップな雰囲気をぷんぷんさせる。
 もう一点、"花魁"は浮世絵に登場するような芸者風の女性をカラフルに、幾何学的抽象で表現していた。顔の部分は白いアクリル板というのが良い。
 ただ、作家の行動を知ったときはちょっと引いた。なんというか、あのアナーキーさは僕の好みではない。あまり僕の好きなタイプの人間ではないようだ。

・清水晃 "色盲検査表"