『サンシャイン2057』を観た。

 船の名前を見てもわかるとおり、イカロス神話をベースにしたSF。もうそのままだろう。さまざまな宗教にある太陽信仰というものがメインテーマだからさまざまな人種のクルーがいるのかなとも思った。太陽信仰というものをさまざまな宗教観からとらえたかったのだろうかと。んで、まあこの辺に関して、「人種がいっぱいでオリエンタルな雰囲気」とか「とりあえず白人がヒーローで云々」ってのはナンセンスだと思う。アメリカ映画なんだし。仮に日本でああいう映画を撮ったら、まあ、しょぼさは置いといて、主人公は日本人だろうし。あ、でもまあ控えめな日本人だから群像的に描いて、まあ誰が最後に死ぬかわからないが、日本人だけ生き残るってのはないかも。
 SF考証的には、まあ若干妙なところもありましたが、全体的には良作のSFなんじゃないかなと思う。宇宙船イカロスも『2001年』や『ソラリス』なんかも意識されてた感じだし。映像も美しいし。ダニー・ボイルらしいホラー要素もあるし。あの死体の新鮮さはさすがです。ちょっと神秘主義的なところが鼻につくけど。
 前半でちょっと出てくる太陽の美しさに魅せられた1号のキャプテンの映像とセリフは恐らく1号壊滅とキャプテン狂気の伏線なんだろうなと。まあ、なぜあの姿で6年半も生きていられたのかわかりませんが、まあ、精神論的なはなしだろう。あるいは、あの最終的な姿になったのはキャパがフィルターを切ったからなのかもしれないが。それまでは全身軽い火傷の状態にとどまってたとか。まあそれでも恐らく医学的には重度の火傷なんだろうけど。

 この作品では、人類が滅亡の危機に陥るのは自身のテクノロジーによる戦争や環境破壊ではなく、結局のところそれこそ神として崇められる太陽の衰退によってである。が、それを回避する為に科学技術である「イカロス号」という宇宙船に乗っていく。その名をつけた時点で失敗確定なきもするが、事実1号はその太陽信仰の強さゆえに失敗に終わる。墜落しないという皮肉つきで。逆に、無邪気にってわけでもないけど、任務を遂行し、太陽を一番恐れていた人物によって最も太陽に近づき、2号はその使命を果たす。この辺の対比は結構面白いと思う。

 まあ、この映画を『アルマゲドン』的に観たらあまり面白くないだろうし、『ソラリス』的に観ても物足りないと思うけど、ひとつの神話とか、ある宗教の一説という感じの見方で観ればそれなりに楽しめるんじゃないかなと思う。あ、あと、真田広之の大活躍を期待してもだめです。

参考:
イーカロス - Wikipedia
太陽神 - Wikipedia
サンシャイン 2057 - Wikipedia