「要は、勇気がないんでしょ?」で始まるブリットポップ

※書き手はオアシスのボーカル、兄貴はオアシスのギタリスト。

ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっとロックが好きで、ビートルズが好きだったんです。
でまぁ、当時も今と変わらずあごをしゃくりながら歌ってて、
兄貴と酒を飲みながら「ロックが足りない、だから売れないんだ」と文句言ってたのです。
グラストンベリーで。
したらまた、このファッ○ン兄貴が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今からディスりに行こう」と。
ディスなんかしたことないオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。でもクソ兄貴は、少し遠くで演奏しているデーモンとグレアムを指して、「あそこ行って中産階級なじろう」と。
オレは「いや、向こうも迷惑だし」とか「さすがにうざいっしょ」とか言って止めます。兄貴は「嫌がられたら殴ってくればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをやめました。
「じゃあ、ローゼズのユナイテッド好きを責めるか?」とバカ兄貴は言います。
「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。
「でもロックが足りないんだろ? だったらディスるしかないだろ」と兄貴は口調を強めます。
「そうだけど、もっと普通に売れたいっていうか」とオレ。
「なに、普通って?」
「メディアに取り上げられたりとか、ライブとか、そういう…」とハッキリ言えない自分。
「じゃあ、オレが今から暴れだして、取材でエイズ発言したらいいか? それもメディアに取り上げられるってことだよな」という兄貴。
「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。暴れてからやってくる記者って軽い記者が多いとか」
「は?」
「その…」
「…軽い記者じゃねぇよ。ノリが良い記者だよ」
「あ、そうだったね。…でもオレ、ノリの良い記者、少し苦手だし。そこまでして売れたいってわけでもないし…」
兄貴はオレの顔をじっと見つめながら、一言、
「だせぇ」
と言いました。

ごちゃごちゃ言ってるけど、ブルーズがないだけじゃん

彼は言います。
言い訳をして、さも「こういう事情なんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、
ブルーズがない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。
ディスる勇気もないやつが、ロックがないとか言うんじゃない。
どうせBBCに行けば「トップ・オブ・ザ・ポップス観るような子は…」って言うし、
オーストラリアにつれていけば「あそこの記者は苦手だし、そもそもキャセイパシフィック乗れないし」とか言うだろうし、
未発表の新曲をライブでやっちゃえって言えば「いや、暴動起こったらまずいし」って何かにつけて言い訳するんだろ?
だったら「自分には他のバンドをディスる勇気がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。
そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、
つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。

あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。

その場は言い訳もできず殴ってごまかしたけど、家に帰ったら兄貴の顔とセリフが思い浮かんで、
娘の布団の中で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。
オレにはオレの事情があるんだ、しょうがねぇじゃんかよって。ビートルズの「ノーウェアマン」聞きながら(笑)

元ネタ:
http://d.hatena.ne.jp/guri_2/20080316/1205641886

いんすぱいや:
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20080414/startpacificwar
http://d.hatena.ne.jp/welchman/20080414/1208183341
http://d.hatena.ne.jp/terracao/20080414/1208186963