来るべき未来のためにアンドロイドの取扱説明書を観ておくべき――『イヴの時間』を観て。

――あらすじ

未来、たぶん日本。
ロボットが実用化されて久しく、
人間型ロボットが実用化されて間もない時代。

生活家電として一般家庭までアンドロイドが普及し、ワイドショーではアンドロイドに感情移入してしまうような若者を"ドリ系(アンドロイド精神依存症)"と称して危惧するような時代。
ある日、高校生のリクオは彼の所有するアンドロイド、"サミィ"の不審な行動記録を発見する。特に命令していない行動をアンドロイドが取る。リクオは、アンドロイドを持っていないがなぜかロボット三原則などに詳しい友人:マサキと共に"サミィ"に記録されていた場所へと向かってみる。するとその場所には雑然としてありふれた金属の扉。そしてその奥には、「人間とロボットの区別をしない」というルール掲げる喫茶店イヴの時間」。リクオ達はそこで、様々な「人」と出会うことになる。
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まず思ったのが、挿入される図解とか解説的な心の台詞、あとは個人的に喫茶店オーナーのナギのウィンクから飛び出る星とか、かなり「取扱説明書」を意識しているのではと。このDVDのパッケージからして、裏表紙には各エピソードの中心となるところのアンドロイドのスペックが書かれていて、さらに付属品の中に「ユーザーズガイド(本ディスク)」とある。
だからなに?とか言われると、いや、まあ、そう思ったまでです、と考え及ばず感が一杯の返答しかできませんが。

有名どころでは『われはロボット』やら『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』など、人と人/ロボットとの付き合い方、距離とかを描いた作品が連綿と伸びているわけですが、たいていはちょっとよくわからん理解できない人をロボットやらに見立てたり、ペットの存在に対するような、むしろ人よりも共感すべきものとして描かれたりで、つまり「こちらからみた向こう側」というものを描いてきたりで、遠い昔から来るべき未来に備えた心構え、「もしかしたらこういう事が起こるやも知れませんから皆さん考えておくように」といった感じで提示され、卵が先か鶏が先かという風に日々科学とテクノロジーも進歩し、色々実現しつつあるわけですが、実際しかし使役するためだけに人工的に設計、デザインされ創りあげられた、こちらからみて主観を持っていると思う事ができる存在というのはまだないですね。
ただ、何もないところに理解不能な現象をみると不条理を排して神性を拝するのが人なので車と性行為に耽ったり、「iPodが僕の今聴きたいものをずばりと当ててくれる、こいつは意志がある」とか言ってみたりするわけです。こういうのは、擬人化するからこんな行動と思考をたどるのかどうなのかとか僕は知りませんが。

海外ではどうだか知りませんが、国内でみると結構ものを擬人化して感情移入する作品というのがありますね。昨今話題のヘタリアとか、まあアレは国というか国民性とかの概念の擬人化ですが。他に具体例を挙げろとか言われても急には思い出せませんので思い込みかもしれませんが、「〜〜タン」とかそういうのが多いじゃないですか?
そういえば椎名高志の『(有)椎名百貨店』の3巻あたりに確かなんかアンドロイドに心血注ぐモテない青年の悲喜劇がありましたね。

とりあえず『イヴの時間』は大変面白い。


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Official: イヴの時間