『ソラリスの陽のもとに』読了。

(出)早川書房・文庫
(著)スタニスワフ・レム

175円
10/4に高原書店で購入。「ユービック(ディック)」と「絵の言葉(高階秀爾小松左京)」も同時購入。10/16〜読み始める。

 レム自身の言葉によるとこの作品は、

星の世界を目指す人類と未知の現象との出会いの一つのモデルケース

-p316訳者あとがきより

であり、内容も、

その「未知のもの」との出会いは、人間に対して、一連の認識的、哲学的、心理的、倫理的性格の問題を提起するに違いない。

-p315訳者あとがき

という言葉どおりである。
 映画版はやはり別の作品と捉えるのが適当だと思う。大局的には両作品ともレムの言葉どおり、未知との出会いによって生まれる人間の葛藤により人の姿、本質を浮かびあがらせている。
 レムの言葉どおりに捉えれば、小説においての「ソラリス」は共存、対立という二項的な視点では語れない存在なのだろうか。本質的に構造や目的の異なった正に「未知のもの」。終盤にケルビンは「ソラリス」が不完全な神のような存在の幼児期なのではないだろうかという仮説を立てている。それによって自らの受けた仕打ちに対して折り合いをつけようとしていたのではないかと思う。
 映画では、そんな仮説は出てこずひたすら映像で見せていた様に思う。最終的にはレムの言うところの紋切型、共存のような形で締めくくられている。ソラリスケルビンのイメージする大地を作り出し、そして父親と再会する。これはれっきとした接触交流の開始を思わせる印象だ。