東京国立博物館

 大観記念館を後にし、不忍池をぶらぶらしながらどうしようかと話していたら東博に行こうという提案があったため、進路を上野公園の方へ。アメ横中田商店でミリタリー系のバッグでも見ようかなと思っていたがまあいい。
 東京国立博物館はちょうど「大徳川展」の最中で平成館のほうは結構混んでいたようだが常設展の方は比較的すいていた。まあ常設展へ。大人600円。まずは本館へ向う。途中ベンチの脇や本館入り口やらに多数、写生をしている人がいた。皆一様に緑のドーム状屋根のついた表慶館に向かい、実際描いているのは表慶館のようだった。なにかコンペでもあるのだろうか。
 ともかく本館へ。まず海外の時代物映画に出てくるような正面の大きな階段と装飾的な時計に圧倒される。実に荘厳。いまこれを書いているこの時間(21時半現在)にあの場所にいたらさぞかし怖いだろう。
 まずは1階中央の部屋で仏像の企画展示をしていたのでそこへ。インド・中東あたりから日本へと仏教が伝来したわけだが、その過程を仏像の姿を通して見るという感じ。西洋的な顔立ちから徐々にアーモンド形の目や中国的な顔立ちになり、そして細く目じりの長い柔和な目の顔になっている。なるほど結構区別がつく。
 次に一回の常設展示をさらっと西側から。近代絵画の「夜の停車場」([素材] 油彩・カンヴァス [制作年] 1909年 [作者] 高村真夫 [現所蔵者] 東京国立博物館)が強く印象に残る。停車場という日常/非日常の境。そして夜。疲れきって眠る女性と老人。次に岸田劉生の「麗子」。その後風俗三十二相おかみさんの風俗シリーズ。「文化財を守る―保存と修理―」の展示にはちょっと期待していったが、微妙だった。ギャラリーフェイク以上のものがない。
 ささっと眺めて二階へ。「日本美術の流れ」と題して展示を行っていた。まず出迎えたのは「火焔土器」。歴史の資料集とかに載ってたよこれ!感動です。細部が荒いんだけど、どうにもその火焔の様は火焔だし、日本人の抽象性というかデフォルメ精神が感じられる。そして「埴輪 胡座の男子」。足の具合とか表情とか、実に良い。キティ某よりもぜんぜん良い。「埴輪 盛装の男子」。玉飾りのついたつば広の帽子や美豆良http://www.cosmo.ne.jp/~barber/mizura.htmlは高貴な身分をあらわすそうで、更に腰に当てた刀や籠手なんかは武人であることをあらわすそうな。
 ここでふと左手(入り口側)をみると、なんとあれだ、土偶が!!http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=J38392これも知ってるよ!!感動です。
 ささっと大き目の仏像やら曼荼羅やら三大字「旧劫庵」やらを次々眺め「茶の美術」のコーナーへ。なにはともあれ「柴庵」である。寸胴やらひびやら黒褐釉やらそそられます。隣の「尼寺」も引き込まれる。ってもまあ良し悪しなんてわかりませんがね。ただ、「透漆塗飯椀」に炊き立ての白米なんかが盛ってあったらさぞうまそうだろうという想像をしたら涎が出そうでした。茶碗に食欲をそそられたのは初めてだ。ひとつわからない単語「香合」という茶道具があったが、どうやら香を入れておくものらしい。まあ外見と名称でそれとなくわかってはいたが。
 「武士の装い―平安〜江戸」をするっと流して「屏風と襖絵―安土桃山・江戸」へ。「耕職図屏風」(久隅守景筆 江戸時代・17世紀 )しか印象に残ってないが、一瞬中国辺りの絵かなと思った。四季の農作業風景を描いたものだが、農民の姿がそう思わせたらしい。なにやら細く伸びた口ひげと細い目とかが。
 続いて「暮らしの調度―安土桃山・江戸」へ。「水滴」という書道用具がキュート。犬やら猫やら亀ウサギとかわいい動物が割とリアルにというか、現代にも通じる造詣であらわされていた。どうやら粘土だか蝋だかで造型して鋳型をつくりそれを元に作るらしい。
 「書道の展開」「能と歌舞伎」をささっとして、「浮世絵と衣装」へ。主に浮世絵と印籠、根付を鑑賞する。
 「浜村屋路孝 三代目瀬川菊之丞の仲居おはま」(東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794))が異彩を放っていた。他の浮世絵に描かれている人物とは目が違う。そして他の絵では実に華やかに着物の柄、模様が描かれていたが、写楽は地味だった。まああそこにあった絵がそういうものであって全部が全部そうなのかわからないが。
 北斎の冨嶽三十六景、「諸人登山」があった。登山人が壕のなかで身を寄せていたり、苦しそうに登っている様など。また、「東海道五拾三次之内・吉原 歌川広重筆 」も。
 と、かなり急ぎ足で観て回ったので惜しさが募る。ぜひまた行こう。
 そして最後に法隆寺宝物館へ。正面に一面池が広がり、噴水が湧き、かなりモダンな造りでちょっと驚いた。これももったいないことに閉館時間が迫っていた為ざっくりと回る。宝物というだけあってどれも美しいが、なんというか、僕としてはやはり土偶、埴輪や茶道的などの素朴さの方が好きだ。