イリヤ・カバコフ『世界図鑑』絵本と原画展@世田谷美術館

世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUMイリヤ・カバコフ展に行ってきた。大まかな感想として、なんというか美術館の展覧会というよりは「カバコフ記念館」みたいなところでやるようなものじゃないのかな?と思った。

構成

Ⅰ.生活
Ⅱ.科学と産業
Ⅲ.イデオロギー
Ⅳ.物語
Ⅴ.詩
Ⅵ.オーシャ
その他:
・絵本を読むコーナー
・《ぬり絵アルバム》と《外は春》
・雑誌

「挿絵画家という社会的役回り」とは何か?-イリヤ・カバコフ

これらすべての本の挿絵を描いたのは、「私」ではなく「彼」だったのである。たとえ「彼」が私の手で描いていたとしても。

 インスタレーション芸術家としてのカバコフの作品中に含まれる児童向けの挿絵の様な絵、その存在の意味がここにある。カバコフにとってこの児童向けの絵はソ連におけるポピュラーな、俗的なものの象徴であり、つまり「ソッツ・アート」的な意味の上にある。その文脈でみれば、最後の展示物《ぬり絵アルバム》と《外は春》があることによって、この展覧会の表現するものが見えるのかな。つまり「くそくらえ!」や「ファック・ユー!」というやや直接的な言葉で表出している彼の当時の内面、「彼」によって描かれたというアイロニー

雑感

 個々の作品を観ると、線画や素描の段階における筆の勢いというか、かなり上手い。が、色が塗られたりするととたんに児童向けのやや粗雑なわかりやすい絵に変化する。彼の「隅が好き」や「ロシア人的な名前のユダヤ人」という属性によって生まれる世界との関係が表れていると思う。
 いろいろキュートなキャラや社会主義的リアリズムのユートピア的なレトロフューチャー感満載の絵など、結構楽しめた。

購入

 展覧会図録を購入。¥2,500。カバコフ監修らしい。結構重いハードカバー。