『猫とともに去りぬ』ジャンニ・ロダーリ

ジャンニ・ロダーリという作家をこれまで知らなかったのが残念でならないが、これからは知ったので良い良い。
ブッツァーティの『神を見た犬』とかもそうだけど、光文社古典新訳文庫は良い仕事しますな。

ジャンニ・ロダーリは児童文学というか、ファンタジーを主に書いている人らしい。それゆえこちらでの評価が若干低いとか何とか。しかしこの『猫とともに去りぬ』、短編集だが粒ぞろいで最初から最後まで楽しめた。どれもこれも日常的な町の一角からいつの間にか奇妙に可愛らしい不思議な世界に引きずり込まれ、ぴりりと風刺が効いてる。
表題短編『猫とともに去りぬ』は家族に疎まれてる昔話好きのおじいちゃんがある日、もう猫になろう、ということで猫になるといういきなり超展開なところに、実は周りの猫も近所のおじいちゃんおばあちゃんが猫になった姿で……みたいな。そこから色々と世界中を動かす出来事が起こったり、と思わずにやりとしてしまうお話。

一番印象に残った話は『ガリバルディ橋の釣り人』だろうか。限りなく手に入らないものを求める諦めの悪い男の話。
人には向き不向きがある。どんなに努力しようとも手に入らないものもあれば、なんの苦労も無しに自然と手にしてしまうものもある。全く魚に嫌われて、一匹も針にかからない釣り人アルベルトーニ。ある日その横で彼とは正反対にひょいひょい釣り上げる男ジョルジョと出会う。彼は糸を垂らす時のこうつぶやく、
「ジュゼッピーノの所においで」
それを聴いたアルベルトーニも早速試してみるが効果はない。名前の本人でないとダメなのだ。そこでアルベルトーニはタイムマシンで過去へ行き父親と友達になり生まれた息子にジョルジョと名付けさせる。ジュゼッピーノになったアルベルトーニは早速例の呪文を試すが効果無し。横にいる男はドンドン釣り上げる。曰く「呪文が変わったのです」
早速タイムマシンで(以下ry
以降ガリバルディ橋にはいつまでも呪文を試し続けるアルベルトーニの姿が。


色々と考えさせられますな。

猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)